小説

胡蝶の夢

あらすじ

霧深い湖のほとりの一軒家で歳の離れた両親と共に暮らす十歳の少女、サエコ。
絵が好きな彼女は、ある時訪れた青年画家、暁に次第に心惹かれていくが、同時に彼が単なる他人ではないことを疑い始める。彼は、そして、自分は一体何者なのか……。
十年前、転落事故によって最愛の妻「冴子」を失った暁。妻が身籠っていた胎児は、最先端の医療制度によって辛うじて救い出されていた。暁の頼みを受け入れ、まるで同じ時を繰り返すように、かつての我が子同様にサエコを育てていた冴子の両親だったが……。
小泉八雲の掌編『お貞のはなし』を原典に、近未来的な解釈を大胆に試みつつ、少女の儚い恋心の裏側に隠された出生の秘密を描いた、愛と神秘の物語。

Kindle版/160ページ

私はここにいる

あらすじ

かつて、数多の空襲の犠牲者たちを、抱くようにして弔った囚人たちがいた。

昭和初期、戦時色が濃くなり始めた世相の中で、不条理な暴力により片目を失明し、収監された小早川鋭士。
囚人たちを社会の一員として信頼する行刑局長・柾木暁の元で、彼はこれまでにない戦時下の刑務作業に就いてゆく。
一夜にして十万人の命を奪った東京大空襲の焼け跡で、自ら遺体整理作業に志願した囚人たちと共に、鋭士は身元すら分からぬ数多の遺体を丁重に埋葬し続けながら、死者たちの声なき声を聞く……。
実在の人物と、歴史の裏側に隠されていた戦時秘録を交えて展開する、単なるフィクションを越えた鎮魂の物語。

Kindle版/320ページ

まもりがみ

あらすじ

知的障害を負った幼い息子の類稀なる能力が、母親に降りかかる幾多の禍いを遠ざけ続けていた……。

身体は15歳になりながらも、5歳児ほどの知能しか持たず、話す言葉もたどたどしい知的障害児の少年、悠。
彼の目には、愛する母親の身に降りかかる、一瞬先の災いを予見する不思議な力が備わっていた。
心臓を病んだ病床の母と離れ、障害児施設での生活を送る悠。やがて母の病状の悪化を感知した悠は、無謀にも一人で施設を抜け出し、母の元へ向かおうとするのだが……。
サヴァン症候群の少年と、その母との絆を描く、生と死を越えた愛と慈しみの物語。

Kindle版/200ページ

迎え火 – 2025.07. NEW

あらすじ

かつてヒロシマで非業の死を遂げた少女の魂が現代に蘇る。過去と現在が交錯しながら展開する、鎮魂と再生の物語。

ある日突然、気を失って病院に運ばれた十歳の少女、鏡子。それ以来、笑顔を失った鏡子は、空を飛ぶ飛行機の轟音に異常に怯え、その訳を問いただす母親に「バチがあたった…」としか答えない。 
誰もいない川辺にたった一人で木橋を組み続ける奇妙な老夫との出会い。老夫の家の仏壇に置かれた、戦時中の家族の肖像写真を見つめる鏡子。いるはずのない妹への思慕、あるはずのない記憶のトラウマに困惑し続けていた鏡子は、そこにやっと、前世の自分の姿を見いだす……。

Kindle版/175ページ